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11.免責を受ける運転供用者 〜自賠法3条但し書きの立証〜


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判例要旨

道路交通法七二条一項前段にいう「交通事故の発生時には直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」というところの「負傷者」とは、死亡していることが一見明白な者を除き、車両等の交通によつて負傷したすべての者を含む。

理由
 

 

原審の確定するところによれば、上告人Aが、昭和四〇年四月三日午後四時二〇分頃被上告人B運転の三輪貨物自動車と接触して受傷した事故現場は、東西に走る阪奈国道と守口・八戸の里線道路(南北路、幅員約七・五米の歩車道の区別のないコンクリート舗装道路)とが交差する大阪市a区b交差点から南北路上南方約五〇米の地点にあつて、本件事故現場附近からは、ほぼ南西方向に一本の地道が三差状に出て、その三差路の幅員は、右南北路と接する部分では約九・三米あるが、南西方向に伸びるに従い急に狭くなり約四米となる。本件事故現場附近は田畑が多く、ことに、西側の見通しは良好であり、信号や横断歩道の設備はない。道路状況を説明している
 

右南北路は、自動車の往来が頻繁で、右浜交差点の信号が南北赤になるときは、北行車は

たちまち停滞して、その列は、右三差路すなわち本件事故現場附近をはるかに超えて、全長約一〇〇米に達する程の停滞状況を示し、他方南行車の方は、浜交差点で通行止めとなるので、阪奈国道から廻つてくる自動車が南進してくるだけの状態となる。上告人Cは、その友人訴外Dを見送るため、右三差路を経、右南北路を通つて浜交差点のバス停留所まで行くべく、その長男上告人Aを伴つて自宅を出、Dと話をかわしながら、三差路を通り、南北路に達したが、そのときの南北路の交通状況は、丁度浜交差点の信号が南北赤であつたから、北行車が、前記のように一〇〇米位列をなして停滞し、三差路前も、人が車の間を通つて横断できる程度に少しの間隔をおいたほかは、自動車が頭尾を接して停車していた。上告人Cは、右南北路の西側端を通ることは停滞車のため困難であるとみて、なんとなくその場で直ちに横断してその東側端を歩こうと考え(上告人Cは近辺の交通状況を知悉していた。)、前記停滞車の間隙を抜けて南北路を横切り、その

東側端に渡ろうとし、よつて、上告人Aが先頭にたち、少し間隔をおいて上告人Cが続き、その後にDがほぼ一列になつて続いたのであるが、上告人Cは、その際、特に南行車通過に伴う危険に備え、上告人Aの手をつなぎ、または、注意を与える等の措置をとることなく、慢然上告人Aの独り歩きに任せていたため、かかる場合の事故防止能力を欠く上告人Aは、そのまま独りで停滞車の間を通り抜けて南北路中心線附近まで飛び出した。折しも、被上告人Bは、本件事故車を運転して阪奈国道を東進し、浜交差点を右折して右南北路に乗り入れ、その中心線から約五〇糎東寄りのところを時速約二五粁で南進し、右三差路附近にさしかかつたが、前記のように、同所には横断道路の設定はなく、また、叙上のとおり、西側に停滞する車両列のため三差路をなすことすら見極め難い事情にあつたため、そのまま進行したところ、本件事故現場約二米手前で上告人Aが北行停滞車の間隙からやにわに飛び出してきたのに気付き、突嗟にブレーキを踏んだが間に合

わず、上告人Aは、自己の右側顔面を被上告人B運転の三輪貨物自動車後部荷台右側面の二つの蝶つがい附近にひつかけるように接触して転倒した。被上告人Bとしては、北行停滞車が列をなしていたため、上告人Aがその間隙から飛び出してくることを予知することはできない状況であつたというのであり、以上の事実は、原判決挙示の証拠関係に照らし是認することができる。そして、右事実によれば、被上告人Bとしては、本件事故現場附近を本件事故車を運転して時速約二五粁で南進通過中、停滞していた対向北行車列のかげから、突如として上告人Aが自ら飛びかかつてきたような状態となつたのであつて、これに気付いたときは、急停車の措置をとつても、もはや上告人Aとの接触を避けることができず、自車の右側面が上告人Aの顔面に接触してしまつたことが認められ、この間、被上告人Bの運転には別段非難すべき点はなく(右述のような道路交通状況のもとで、被上告人Bに対し、自車の進路直前に突如飛び出してくるものを予見し、これに

対処することまで要求することは難きを強いるものといわねばならない。)、結局本件事故につき、被上告人Bには過失はなかつたというべきで、かえつて、上告人Cは、学令にも達しない僅か五才一〇か月の幼児である上告人Aを帯同して、右南北路の如き自動車交通頻繁な、しかも、横断歩道の設けられていない個所を横断しようとしたのであるから、わが子の手をつなぎ.または、注意を与える等の措置をとつた上、左右の安全をみずから確認して相応の指示誘導をし、もつて、交通事故を未然に防止すべき歩行者、子の監護者としての注意義務があつたにもかかわらず、右義務を怠り、慢然上告人Aを先頭にたたせ、独りで横断するに任せたため、本件事故にあつたというべきであつて、上告人Cは、本件事故につき過失があつたことは明らかである、とした原審の判断は正当として首肯するに足りる。所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切でなく、原判決に所論の違法は認められない。論旨は、原審の認定しない事実関係を前提とし、独自の見解に基づき原判決を非難するものであつて、採用することができない。運転者に過失はなく、幼児を先導しなかったモ者を非難している交通事故状況を説明している


同二について。所論は、被上告会社は、本件事故は、上告人Aの飛出しとこれを制止しなかつた上告人Cの過失によつて発生したものであつて、被上告人Bに過失はなかつたと主張するのみで、自動車損害賠償保障法(以下単に法という。)三条但書所定のその余の免責要件事実については何ら主張していない。しかるに、本件事故は、自己や連行供用自動車運転者被上告人Bの運行上の過失もしくは右自動車の構造上の欠陥または機能障害によつて生じたものではなく、かえつて、被害者上告人Aの監護者である上告人Cの過失によるものであることが認められるから、被上告会社は法三条但書所定の免責の適用を受ける旨判示した原判決には、主張のない事項につき判断した違法があるというものである。
 

 そこで考えるに、自己のため自動車を連行の用に供する者が、その運行によつて他人の生命または身体を害し、よつて損害を生じた場合でも、右運行供用者において、法三条但書所定の免責要件事実を主張立証したときは、損害賠償の責を免れるのであるが、しかし、右要件事実のうちある要件事実の存否が、当該事故発生と関係のない場合においても、なおかつ、該要件事実を主張立証しなければ免責されないとまで解する必要はなく、このような場合、連行供用者は、右要件事実の存否は当該事故と関係がない旨を主張立証すれば足り、つねに右但書所定の要件事実のすべてを主張立証する必要はないと解するのが相当である。自賠法3条の免責条件は、本来自ら立証しなければ免責されないが、それが直接交通事故に関係しない場合は、それが交通事故と関係がないことを立証すればよいといっている
 

 これを本件についてみてみるに、本件記録に徴すれば、被上告会社において、自己が本件事故車の運行に関し注意を怠らなかつたかどうか、自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかつたかどうかは、本件事故と関係のない旨暗黙の主張をしているものと解せられ、原審も、その旨の認定判断をしているものと解せられないではないから(右認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし是認するに足りる。)、原判決に所論の違法はなく、論旨も採用することができない。 被害者または運転者以外の第三者に過失のあったことが争点だといっている
 

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第一小法廷

         裁判長裁判官    岩   田       誠

            裁判官    入   江   俊   郎

            裁判官    長   部   謹   吾

            裁判官    松   田   二   郎

            裁判官    大   隅   健 一 郎

 

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